居合道 道場案内所 


剣道と居合道。同じ剣の道。しかしながら剣道とは異なり、仮想の敵を相手を想定する居合道とは何でしょうか。剣道家にとっての居合道とは何か。『心で抜く居合』とは何か。長年に渡る剣道と居合道の「道」を通じて得るものとは。

今回は新陰流春日井会・岩倉会で指導をされている松岡 良高まつおか よしたか 様に「居合とは何か」「剣の道とは何か」をお伺いしました。

なお今回は、二本立て企画です。同会で同じく指導されている 木ノ本みゆき 様にも同じテーマでお伺いしました。併せてお読みください。

寄稿コラム:(後編)私にとって剣の道とは




心で抜く居合


ー 新陰流春日井会 松岡 良高 著


1.居合道修行の始まり


松岡良高 氏剣道を学ぶ者は、せめてこれ位は心得たいもの」と、昭和44年全日本剣道連盟居合が制定されました。
私は、小川 金之助おがわ きんのすけ先生の生誕の地、愛知県の小さな町、岩倉市の岩倉武道館で少年剣道の指導をして居ります。全日本剣道連盟居合が制定されて、愛知県剣道連盟で制定居合の講習会が開催されました。この講習会に参加したのが、私の居合道の修行が始まりでした。

剣道の合間を縫って地元で、数人の仲間と居合道の稽古をしました。稽古をしているうちに居合道に興味を持ち、古流も学ぼうと名古屋の洗心せんしん道場で指導をされていた、新陰流居合の範士八段 秋田 森治あきた もりじ先生に師事しました。
秋田先生は鹿島 清孝かしま きよたか先生の高弟で大変温厚な先生で、親切に指導をして頂きました。それ以前に鹿島先生には、岩倉いわくらまで来て頂き、週一回剣道の指導をして頂いておりましたが、居合道は勤務の都合で名古屋市の洗心道場に通い、秋田先生に学びました。

全国各地の大会にも、鹿島先生・秋田先生にお供させて頂き、色々な先生にも教えを頂ける様になりました。現在は、新陰流 岩倉会いわくらかい春日井会かすがいかいの指導をして居ります。

2.稽古は基本が一番


松岡良高 氏愛知県は、全日本剣道連盟から小倉 昇おぐら のぼる先生をお招きして、年に一回、5年間にわたりご指導を頂きました。『基本動作が大切である。基本を体で覚えて考えなくても動けるように稽古を積み、要義を理解して動作になるのが技』です。

「居合に命を吹き込め」 これが、小倉先生のおしえです。

居合道は仮想の敵を想定して稽古をするものです。「人は心によって動く。その動きは習癖になり品位を形成する」との教えがあります。自分の心を磨く事が本来の稽古です。武士道の訓えを学び自分の人間形成に努めなくてはいけません。

正しい心の表現が、私の居合道稽古の大きな目標です。仮想の敵は自分の師匠でも有ります。剣道形・打太刀うちたちくらいであると思います。打太刀うちたち仕太刀したちに倒される役ではありますが、単に倒されるだけではなく、常に一瞬早く動き、仕太刀したちの動作を引き出す師匠役でもあります。仮想敵が打太刀うちたち、自身が仕太刀したちで、相手の動作に応じて自身の動作を起こすことが重要であると思います。

多くの技が有りますが、かたを学ぶよりも要義ようぎ(心)を学ぶことが大切です。それぞれの技には要義ようぎがあって、動作があるのです。要義ようぎとは心の働きです、そのうえで動作が生まれるのです。居合道は『心を磨く武道』であります。


3.正しい姿勢、正しい呼吸・正しい意識


刀法とうほう心法しんぽう身法しんぽうも学ばなくてはなりません。
居合道は、体幹たいかん手の内てのうち間合いまあいを修行するものであります。

礼法れいほうは心の表現である [草間 純一くさま じゅんいち先生の訓え]

武道だけの教えでは有りません。日常生活に生かせてしかるべき教えで有ります。

武士道のおしえには、日常生活で役立つことが沢山あり、人間形成を目指すには欠かせないおしえであります。

『居合道の技を心で表現する』それが私の目標であります。

稽古が面白くなると上達します。楽しく[したしむ]心境になる事です。私は高齢ですが弟子から学ぶ事を信条として、新陰流の伝承に努めたいと思っています。自分が教えた事を弟子から返してもらう稽古です。

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教うるは学ぶの半ばなり

教うるは学ぶの半ばなり



4.海外での指導


私は石堂 倭文いしどう しずふみ先生のお供をして、オランダの居合道セミナーに参加をしてから25年になります。

今では、石堂先生のグループとして、新陰流居合道の指導を行っています。欧州新陰流連盟も発足して、現在は、居合道6段 合格者が2名おり、会員は150人を超えています。オランダ・フランス・イギリス・スペイン・ギリシャ・ドイツに会員がいます。毎年、弟子の木ノ本みゆき 教士8段を連れて、オランダ・ギリシャ・フランスで指導を行っております。

全日本剣道連盟からの派遣で指導にも行かせていただきましたフランス(3回)・イタリアでは、剣道の指導もさせて頂きました。剣道の田口 栄治たぐち えいじ先生・中山 峯雄なかやま みねお先生にお世話になりました。プライベートでは、ニューヨーク5年・サンフランシスコ3回・アルゼンチンへ、剣道と居合道の指導にも行ってきました。

外国人に日本人の武士道の精神を伝えることは難しいですが、学びに来た外国人の参加者からは『居合道の技だけでなく、武士道と歴史を学びたい』という気持ちが伝わってきます。

石堂先生のご指導を頂きながら、外国人に『心で抜く居合』を指導していきたいと思っています。
言葉で伝えられない部分は、自分の行動で示し侍の精神で指導して行きたいと思っています。

『多くの人が歩くとそこは道になる』

新陰流春日井会のメンバー
新陰流春日井会のメンバー (コロナ禍なため、マスクをして撮影)




関連リンク


新陰流春日井会 紹介ページ
新陰流春日井会 公式サイト




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